ぬっとあった幸福地蔵
2014年6月。
愛車ごとフェリーに乗り込み家族全員で佐渡を目指しました。奇祭 つぶろさし を観るためです。奇祭 つぶろさし は、毎年6月15日に佐渡の羽茂(はもち)地区でおこなわれるお祭り。その昔、みうらじゅん氏の「とんまつり」を読んで以来、いつかこの目で見てやろうと思っていました。
今年はその6月15日が見事に日曜日にあたり、家族旅行は佐渡に決定です。
夕方4時ごろ新潟港発のフェリーに乗り込みます。車ごと佐渡に渡るのは初めてで、不安でしょうがありません。不安でしょうがなく、事前にネットで念入りに調べ、友人に聴きこみ、乗り方やその所作を調べたのですがそれでもよくわかりません。よくわからないまま発着場に到着し、よくわからないままフェリーの腹の中に吸い込まれました。
立体駐車場みたいになってるかと思いきや、違う。隙間を埋めるように停めるだけだった。
根が几帳面なものですから、フェリーの腹の中は四角四面に区切られていて蜂の巣のように車が収まるものだと思っていました。そうでなくとも駐車場よろしく白線で区切っていてほしかった。フェリーの腹はあくまでもアバウト。誘導員の身体全体を使ったジェスチャーに導かれ、我が車で隙間を埋めたものの、いつ降りてよいのかもよくわかりません。キョロキョロと挙動不審全開で周囲の様子を伺いながらの乗船となりました。
宿は羽茂に近い小木。古い町並みで最近脚光を浴びている宿根木にもすぐ近くです。というか住所的には宿根木。
宿に着いたころにはあたりは真っ暗だったものの、元々到着は遅くなるとわかっていたので、この日は飯を食べて寝るだけと割りきり就寝。そして翌朝。
一寸でもこの宿に滞在した気分を満喫してやろうと、早起きして散歩にでかけました。天気もよく清々しい朝です。
宿根木集落へ向かう道沿いに看板を見つけました。「しあわせじぞう」と書いてあり、傍らには石造りのお堂があります。
今回の旅は行程的に仏像成分を入れる余裕が無いとハナから仏像は諦めていたので、路傍の地蔵でもラッキーじゃんと写真を撮りに近づいてうわっ。
泊まっていた宿の後ろから、デカイ奴がぬっとこちらを見てました。
予想外。それ故に恐怖。暗かった故に朝の不意打ち。
気を落ち着けるために何食わぬ顔で宿に戻り、朝飯を食い、家族を引き連れて改めて巨大地蔵の元に向かう。本来優しいはずの地蔵は、そのロケーションによって妙に恐怖感を醸し出す。山門をくぐると、倒れかかっている地蔵、薄暗く巨大な桶のようなもの中に祀られている地蔵。
茂みの向こうに何かが、と思って除くと中途半端にでかい石造りの大黒さんがいてうわっ。祠には性器をかたどった像と色あせたダルマ。廃墟の様相。無邪気な息子。恐怖このうえなく、実は廃墟とか怖いから嫌い。
地蔵は像高17.5m。1983年(昭和58年)建立のコンクリ仏で、何調べかは知らぬが世界一の大きさだとか。坂原弘康氏の著書「大仏をめぐろう」によると大仏の定義は立像で約4.8m、坐像で約2.4m以上となっており少なくとも大仏は確定で、はて、であるならば世界一なのであろうかと思うところで、同著では17.5mを超える地蔵は掲載されていない。宮田珠己氏の著書「晴れた日は巨大仏を見に」では高さ40m以上の巨大仏に絞って旅をしているが、もちろんと地蔵はいなく、ならばそれを知ることに重きは置いていない私であるからしてこれ以上は調べないが、地蔵としてはそれなりに巨大な地蔵であることは間違いなさそうだ。わりと出来の良いロゴマークのシールが貼ってあった。
御前立は長岡花火の三尺玉でたとえるならば、五号、七号、尺玉に相当し比較してご本尊の巨大さを引き立てている。コンクリ本尊の質感や周囲の雰囲気は糸魚川の白馬大仏によく似ており、そうするならば巨大な犬に追い掛け回された記憶が蘇り、やはり恐怖であり追い回されてうわっ。まるで無力な俺は高木ブーだ。
宿の人に伺ったところ、この地蔵をつくったかたはキノシタさんといい、まだご顕在。この地蔵のところにも度々いらしているそうだ。
恐怖恐怖と大袈裟に騒ぎ立ててきたこの文章の恐怖の極みが、この地蔵の真裏にある小さめなお堂。この狭く小さなお堂の中にお婆さんがギュウギュウになるほど入り、一晩中お経を唱えるという行事があるのだそうだ。そしてそれは今も続いている。想像してみ?恐怖だろ。匂いなんかタンスの中みたいだろうぜ。
宿を離れ、待望のつぶろさしへ向かいました。軽やかな菅原神社と重厚な草刈神社の演舞に、大満足のつぶろさしです。
その後、佐渡旅行の第二の目的であるのらいぬcafeに。みうらじゅんのスライドショーを観に行ったときに、友達からこの店のオーナーを紹介してもらい、それ依頼オーナーのファンになりました。新潟県民にとって同じ新潟なのに東京より遠い佐渡。ようやく店に来ることができて嬉しいです。
いい店。俺の家のようであり、俺の家でない。自分の時間軸とは平行に走っているもう一つの時間軸、そこにある俺の家のようでほぅら見ろ、ジャッキー・チェンの本とか置いてあるし、お洒落なのか雑多なのか懐かしいのか尖ってるのか、危ういロープの上に微妙なバランスを保って安定してる。嫁ハンも大喜びだ。ジョジョの奇妙な冒険のフィギュアもあるし間違いない。
スープカレー。スパイスが効いていてかなり辛いけれども、深みがある。スープが辛いお陰で、焼きを入れた野菜の甘みがグ~ンと引き立って美味い。
二度目の佐渡。佐渡がますます好きになった。一度目の見仏は未だ書ききれてない。
つぶろさしの感想はいずれもう一つのブログ(フランシスコ・ムニエル)に。
2014.6.15
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