やっと安禅寺の内陣に入れた
元旦一発目の見仏で柏崎の報恩寺に伺ったあとは、長岡市へ戻り安禅寺に伺いました。こちらの毘沙門天は、大晦日から1月3日までのご開帳。
安禅寺は金峯神社(きんぷじんじゃ)という神社のすぐ隣にあります。明治の廃仏毀釈までは、安禅寺がこの金峯神社の別当寺(べっとうじ:江戸時代までの、神社を管理するために置かれた寺のこと。神宮寺、神護寺、宮寺なども同義。)であったとのこと。この金峯神社は、長岡近郊でも有数の神社であるために、いつもの事ながらかなりの賑わいで、初詣に訪れている人が行列をつくっていました。
そして、対する安禅寺は毎年のことどおり人気もなく静かなお正月なんだろう…と思ってたら、あれあれ、そこそこ賑わっているではありませんか。
どうやら保存会『蔵王堂城史跡を守る会』の皆さんが、金峯神社から安禅寺へと繋がる橋に看板を設置したりして、ご開帳の案内していたからのようです。
今年の新潟は例年にない大雪で、三角木馬を想起させる(一般的には想起しない)雪囲いも勇ましい。雪は、寒いし冷たいし交通も不便になるし、ヘタすりゃ人も死んじゃうし…と、直接的にはスキー場以外あまりいいことはないのですが、子供のころから雪に対しては楽しい思い出が多かったためでしょうか、こういった雪国文化は大好きです。こういうときに、子供のころの体験や感じたことが、大人になっても随分と引きずってくるもんだなということを考えてしまいますね。息子にはできるだけ良い体験をさせてあげたいなと思うのだけど、どれが”良い体験”となるのかがなかなかわからないのが、難しいところ。
そういえば今年は、久しぶりに屋根の上に乗せて雪を下ろす「雪用の滑り台」みたいなヤツを見かけました。
本堂の中に入ると、例年でしたら格子越しに「よく見えないなー」と目を細めてご本尊を眺めるばかりだったのですが、今年はその格子が開け放たれ、内陣まで入ることができました。どうやらこれも保存会のみなさんの計らいのようで、昨年よりこのような形式になっていたようです。実は昨年は、こちらへのお参りはサボっていたので、こんなオープンシステムになっていたとは知りませんでした。
格子の外から見る分には、毘沙門天と大きな二体の蔵王権現のみが祀られているように見えていたのですが、実は鉄製のお釈迦様や西行法師、双体毘沙門天など沢山の仏像が祀られていて驚き。そういえばと2006年の新潟の仏像展の図録をみたら、これらの仏像もたしかに掲載されていましたね。
双身毘沙門天は毘沙門天と吉祥天が合体した姿で、代表的なものは大阪府八尾市にある大聖勝軍寺のもののようです。この像の場合は吉祥天も男相で、2尊は背中合わせで立っていました。その姿はまるでかつてのアイドル『Wink』のよう。珍しいものだとは思うのですが、この像のように小さな像であれば、ときたま見かけることができるようです。
古いものではないのですが、ご本尊とともに祀られている大きな蔵王権現もじっくりと見てみたかったので、内陣に入れた今年はかなりラッキー。金峯神社はもともと蔵王堂と呼ばれ蔵王権現を祀っていました。そのため、四天王の一角にしては控えめな造形の毘沙門天に比べ、蔵王権現は荒々しく存在感たっぷりですごい迫力。俺が主役だと言わんばかりです。…そうか、彼らは水戸黄門を演じているんだな。
写真を撮らせていただこうと自己紹介したところ、どうやら保存会のかたのほうでも私のことを知っていてくださったようで、熱烈な歓迎をしていただきました。保存会の皆さんが書かれた蔵王堂に冠する論文や、オリジナル版の御影像などお土産までいただいて、本当にありがたいことです。
近年、このお寺から御影像の版木や掛け軸なども出てきたそうなのですが、その中に常求利童女(じょうぐりどうにょ)のものがあったそうです。
常求利童女は浦佐毘沙門堂に尊像形式のものが祀られているのですが、この御影像が出てきた当初は、常求利尊天と書かれていたために、浦佐のそれと同じものであるとはわからなかったらしい。
常求利童女は諸毒を除くと言われ、ツツガムシによって命を落とすことの多かった地域で祀られることがあるよう。新潟は過去、ツツガムシの被害が多くありましたので、信濃川の河川敷や阿賀野川周辺で、多くの恙虫石祠(つつがむしせきし)を見ることができるそうです。この安禅寺近くの信濃川河川敷にも小さな恙虫石祠がありますので、この地域でも多くの人がツツガムシに苦しんだのでしょう。
ちなみに、ツツガムシの語源は妖怪のようです。謎の死→ツツガムシという妖怪の仕業→病気の理由がダニだとわかった→お前をツツガムシと呼んでやろう…といったことみたい。
ずっと入ってみたかった内陣に入れたうえに新しい発見もあり、良い新年のスタートでした。
2012.1.1
安禅寺(あんぜんじ)
仏像 | 毘沙門天,蔵王権現 他 |
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場所 | 〒940-0027 新潟県長岡市西蔵王3-3-16 |
問い合わせ先 | 不明 |
拝観時間 | 不明 |
拝観期間 | 大晦日から1月3日までご開帳 |
拝観料 | 志納 |
公式サイト | なし |
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