GATABUTSU

プリミティブな不動さん

投稿日 2011年5月12日 木曜日

コメント コメント(4)

カテゴリ下越地区の仏像, 秘仏

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山門には干支の彫り物がある

好きだからといって、詳しいとは限らない。
ファミスタ87のころからもう24年もホエールズ経由のベイスターズファンなんですが、未だにハマスタで試合を見たことはありませんし、毎試合結果をチェックするような感じでもありません。
仏像ファン歴もそれなりに長くなってきたなーとも思いますが、まだまだ知らないことだらけ。どうも性分として、圧力鍋でぐっと煮込むよりは、とろ火で長い時間火を入れた肉のほうが好みのようです。いや、肉でなくて性分的にのんびりと長く好きでいるのが、自分にはいいみたい。
肉って文字と性分って文字を並べて見ていたら、なんだかエロイ気分になってきた僕は、煩悩を捨て去るどころか、どうやら頭がおかしいのかもしれません。

新潟の仏像を見て回るようになって随分と経つのですが、それでもまだまだ知らないことだらけなのです。

ゴールデンウィークが始まる直前、県外の仏友から1通のメッセージが届きました。
そこには、「菅谷寺のご開帳行きましたか?」と。

ノーマーク!ノーマーク!

調べてみると、この菅谷寺というお寺では4/27から5/8まで6年ぶり(...お寺の看板には「7年ぶりのご開帳」って書いてあるんだけど、兎年・酉年のみの開帳だからやっぱ6年でいいんだと思う。)に秘仏のお不動様がご開帳されているとのこと。
どんなお寺なのか?どんなお不動様なのか?公式Webサイトもなく、ブログ記事などもあまり見つけることができなかったので、とりあえず住所と電話番号だけ調べてでかけてきました。

ゴールデンウィークの高速道路渋滞にはまって通常の倍以上の時間がかかりつつも、なんとか2時間以上かけて新発田に到着。
新発田城で息子にお弁当を食べさせ、以前から是非行ってみたいと思っていた蕗谷虹児記念館に立ち寄り、その後菅谷寺に出かけました。菅谷寺がある場所は市の中心部からは少し離れたのどかな山村といった感じ。

地元の長岡市では既に水田には水が張られていたのですが、長岡から比べたら随分と北にあるこの地では、ようやく田起こしが始まったようでトラクターが沢山田んぼに入っていました。

控えめでありつつも、しっかりと数で己を主張するヘアーサロンこじまさんに癒されつつお寺に到着です。

管谷寺近くのヘアーサロンこじまさん

お寺の境内には出店が出ていたり、地元の家族連れが多かったりと、地域から愛されているお寺だということがわかります。

仁王門には、紙にまみれた仁王が立っていました。この仁王様には噛んだ「紙つぶて」を身体の悪い箇所に吹きつけ、病気の平癒を祈ったという信仰があったようです。この菅谷不動尊は眼病に霊験あらたかだと言われているのですが、同じように眼病に霊験があると言われている津南町の見玉不動尊でも、自分の痛いところを撫でた紙を脇に流れる滝の水で濡らし、仁王様に投げつけるという信仰がありました。
一般的には仁王の威厳のある顔や力強い体格に憧れ、健康を祈る信仰が強く、ちぎった紙を口中で噛んで投げつけ、当たると病気がなおったり強くなったりするといった俗信が、昔からあちこちで見られたようです。

久しぶりに御朱印をいただき、本堂に上がります。

正面にご本尊が居るのは気配でわかるのですが、あえてそちらには目を向けずに、天井や壁に掛けられた額や曼荼羅などを見ます。沢山のお不動様の剣が額に入れられて奉納されていました。

気分を盛り上げたところで内陣に入り、いよいよご対面。ご本尊は薄暗い内陣の中。照明の照らされ具合から、さほど大きくはなく見上げる形で祀られているのがわかります。

『意外! それは頭だけッ!』

ジョジョの奇妙な冒険 第一部、ブラフォードの「死髪舞剣(ダンス・マカブヘアー)」が繰り出されたときのナレーションが頭に鳴り響きます。正しいナレーションは『意外! それは髪の毛ッ!』。どうかしてるぜ。

そこに祭られていたのは不動さんの頭のみ。
火焔光背は炎の一本一本が立体的に作られており、その頭を覆い尽くそうとしているようにも見えます。
不動明王と言えば、左右の牙を互い違いに出す”牙上下出”、そして右眼左眼も互い違いに睨む”天地眼”という忿怒の恐ろしい顔で、煩悩を抱える衆生をも力ずくで救ってくれようとしています。
しかしこちらのお不動さんは、まるで「おびんずるさん」を思わせるかのように、その髪も目も鼻も口もつるつるで、恐ろしい表情どころか柔和な顔に見えます。
そう、それはあたかも余分な彫りはそぎ落とし、プリミティブな球体に近づけていくことで、『煩悩を捨て去れよ』とでも言っているかのよう。

お寺の縁起によると

本尊不動明王は印度毘首羯摩(びしゅかつま)の作と伝えられ、比叡山の無動寺に安置されていた。鎌倉時代になり、叡山に登りこの明王に帰依守護しておられた源頼朝の叔父護念上人(慈応)は平家の圧力から逃れる際、尊像の「御頭」を背負い諸国を行脚したのち、文治元年(1185年)に越後に一宇を建立したという。上人の死後、実朝の寄進により七堂伽藍が建立され護国寺と号した。しかし、建長5年(1253年)雷火のため、伽藍は焼失。このとき、本尊のみは、みたらしの中に数多のたにし取り巻き守護し、無事であったという。
”みたらしの滝の中におはしまし数多のタニシ群がり来たり守護しければ尊像は毫も(ごうも:きわめてわずか)損じ給はず”

そう、そのお不動さんの頭は炭化した木のそれであり、首筋に入った数本の線によってよりいっそう木であったことを思わせます。燃えさかる火の中で余分な角がとれ、本質的な部分のみが表に出てきているかのよう。...ヤンキーが年取って丸くなったと考えてたら、わかりやすくていいかもしれない。怒らないで。

管理されているおじさんから、「千葉県の成田山、福島の中野不動尊とならび、日本三大不動尊と言われているのですよ」と、教えていただきました。

息子ちゃんは、田んぼにでているトラクターをみて、「ジョージ!ジョージ!」と嬉しそうです。きかんしゃトーマスに出てくるジョージに似ているらしい。
彼もあれがトラクターだと知るときがくるのでしょう。

2011.05.03

菅谷寺(かんこくじ)

仏像 不動明王
場所 新潟県新発田市菅谷860
問い合わせ先 菅谷寺(TEL:0254-29-2022)
拝観時間 境内自由。ご開帳期間は要事前連絡。
拝観期間 通年。ご本尊のご開帳は兎年・酉年のみ(2011年のご開帳は4/27~5/8)。
拝観料 寸志
公式サイト なし

[googlemap lat=”37.97891″ lng=”139.41193″ align=”center” width=”545px” height=”300px” zoom=”12″ type=”G_NORMAL_MAP”]新潟県新発田市菅谷860[/googlemap]

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“プリミティブな不動さん” への4件のフィードバック

  1. momococks より:

    わたしもポンセとか屋鋪スキでした〜(笑)ゆくぞ大洋!ゆくぞ大洋!

    ・・・なんとびっくりお不動さん頭だけとは!興味深いです!

  2. gatabutsu より:

    ま、まさかポンセの名前が出てくるとは...w 嬉しいっ!
    そう、頭だけでしかも 螺髪も目も牙も なめらかなふくらみとくぼみだけの状態になっていて、どういう言い方をすれば正しいのか知りませんが、日本昔からの木それ自体への信仰を思い出させるような感じで、すごく素敵な不動さんでした。
    今まで新潟で見てきた仏像の中で、一番ドキッとしたなー。

    ご本尊の姿が写真として写ったパンフや資料はありませんか?と訪ねたのですが、残念ながらありませんでした。また会いたいので、6年後も行くと思います。

  3. 隊長 より:

    超久々にコメントいたします。

    5/5に菅谷不動尊へ行ってきました。
    確かにインターネット情報が乏しいですよね、ここ。
    私はたまたま去年行った時に(好きなお寺なので何回もお参りしてます)、看板を見かけて「絶対来たる!」と。

    本尊様は頭だけでしたが、逆に五体満足な仏様よりも神々しいというか…上手く言えませんが、有り難いお姿でした。
    あ、あと初めて「誕生仏に甘茶をかける」って体験をしました。1度やってみたかったんですよね。

    6年後も絶対に行くと思いますので、その時ガタブツさんに会えることを楽しみにしております。

  4. gatabutsu より:

    おぉ!隊長さんも行かれていたんですね。
    そう、たしかに仏頭だけだったことが、よりいっそう神々しく見えたのですよ。
    この感覚何かに似てる、何かに似てる...とお詣りして以来ずっと考えていたのですが、昨日ようやくわかりました。
    頭だけのジオングなんですよ。
    で、光背の炎と照明の感じが、めぐりあい宇宙なんですよ。
    格好良く見えるわけです^^

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