ビニールぐるぐる巻き地蔵2件
大河津分水の可動堰を見に行こうと車を走らせていたら、ビニールでぐるぐる巻きにされた地蔵を見かけました。
白状しますが水門が好きです。
「恋する水門」などという写真集もあるとおり、水門はいいオッサンの恋愛対象であるのです。とか思いきやそうでもなく、ドラクエ2で水門の鍵を手に入れるのに苦労をしたというトラウマから、私と同年代のオッサンは水門というキーワードに反応するのではなかろうか、などと思うわけです。
実際のところは青空につられて出かけただけでして、自我の目覚めか最近生意気を申すようになってきた我が息子に父の威厳を見せようと、大河津分水はお父さんが石を積み上げて作ったのだと教えに行く道中。
本来ならば、水門も大ぶりな可動堰より田んぼの脇にある手回しのものにキュンキュンくるオッサンが私ですが、それはそうと雪国の人間は冬が過ぎ去ろうとしているこの時節の思わせぶりな青空に、ウヒョーとなる性質があるのです。
太陽の日差しともにどこからともなくノコノコと生えてくるオッサンと、水門からジャバジャバと溢れだす水は、田舎の春の風物詩として認定しても良いのではないかとぼんやり考える昼下がり。あと二週間ほど暖かくなったら、スノーシェッドが良いとか、名も無き砂防ダムが素敵だとか言い出す季節です。
ビニールぐるぐる巻き地蔵は大河津分水へ向かう川沿いの道路に居ました。
「車を停めてでも撮りたい地蔵がある」
サッカーの試合前によく聞く煽りの台詞にどことなく似た言葉が頭に浮かんだ私は、サッカーに盛り上がるタイプではまるでなく、むしろ幼少期より野球をこよなく愛していますので、ここでひとつ野球の話など。
中学の練習試合の際「最終回ワンアウト満塁、一打出れば我軍の逆転勝利」というタイミングで3塁にいた私。味方が打った打球はフラフラと内野へあがり見事なツーアウトとなりそうなところ、機転を利かせた3塁ランナーである私の飛び出しでダブルプレーとなり、その後、敵味方問わず相当にバカにされることとなりました。若き日の辛いトラウマです。守っているときもただでさえフライを取れない私ですが、それ以来「フライは落ちたほうが俺にメリットがある」と信じ、今もフライを落とす日々なのです。
そんなトラウマを克服しようと水門に向かった矢先に、地蔵による足止め。むむ、トラウマ恐るべし。
とりあえず車を停めて撮影をしようと思ったものの、川沿いの道は堤防よろしく土手のようになっていて道幅は狭く、路肩は坂。さらには太陽とともに現れた雪国のオッサンが、快適にスピードをあげて走り抜ける。
車を停めるのにも一苦労だ。
お地蔵さんが暖かく見守ってくれるのかと思いきや、写真を撮ろうとする私などは決死の覚悟である。4歳の息子までもが「お父さん、車にはねられるよ」などと説教をしてくる始末。私の威厳はどこへ行った。
地蔵は道路沿いに二体。
長い冬と河川敷の吹きさらしから守るためだろうか、地蔵はビニールでぐるぐる巻き。緊縛加減も良い感じである。
その姿からいつぞやのテレビで見た、雨上がり決死隊の宮迫を思い出した。
オーバーオールに透明ビニールのコートを着こなすファッションは、見事に私の腹筋を奪い去り抱腹絶倒の面持ちだったのだが、私も中学生のころは新聞紙が張り付いたようなシャツをよく着ていた。
フライで飛び出した件と共に、誰にも知られたくない過去である。
一体の地蔵さんの後ろには、水門がありました。大河津分水手前の「真野代堰 洪水吐門」というようです。
川から吹き付けるまだ肌寒い風をうけて「寒い寒い」と言っている息子に「お父さんはこれくらいの水門なら、レゴブロックで作れるよ」と教えてあげました。
もうすぐ春ですね。
新潟では腹や脚に布をまとった布掛け仁王をよく見かけるのですが、ビニール緊縛地蔵が居るとは驚きです。風は冷たかったですが日差しは良かったので、ビニールの下のお地蔵さんはムレていそうでした。
2014.03.09
- 恋する水門
- 佐藤 淳一【著】ビー・エヌ・エヌ新社(2007/08発売)
日本中のあちこちにひっそり設置されている、水門。
色彩もいろいろ、デザインもいろいろ。
派手な自己主張をしないその佇まいには、そこはかとない詩情がただよう。
じっと見つめていると、いつの間にか癒されていく……。
そんな水門をいっぱい集めてみました。
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