池津観音の胎内仏はいずこへ
お寺に古くから伝わるという古文書を見せてもらったところ、どうやらそれは僕のお母さんが書いたもののようだった。「レクリエーション」って文字なんかそっくりだ。
書き出しはフィクションで、そろそろ書き出し小説には飽きてきた頃。
小千谷市片貝にある真福寺(しんぷくじ)のご開帳に行って来ました。
真福寺は越後三十三観音霊場の十四番。今年は北条時頼が没後750年の節目ということで、三十三の霊場で一斉開帳が行われています。
なにげに私はこの真福寺がようやく二ヶ寺目。
山門には大きなわらじが吊るされています。仁王のいる山門に大きなわらじを見つけると安心できる。
格子の中を覗くと、こちらも仁王サイズの大きな下駄が。上越の善導寺などではわらじの代わりに大下駄が吊るされていましたが、仁王の足元に下駄が揃えられたこのパターンはなかなか珍しい。阿行、吽形ともに股下に大下駄が並んでいました。
阿行さんはこれまた珍しいポージング。
右手の構えに何やら違和感を感じ覗いてみると、手のひらにはお賽銭が。
輪投げの的のように、この手のひらを目掛けて賽銭を投げ入れるのでしょう。「この手に見事お賽銭が乗ったら今日一日俺はハッピー」といった運試しのような、「横断歩道の白い部分以外はサメうじゃじうじゃ落ちたら死ぐ」的な自分ルールのような、投げている人のそんな遊び心が頭に浮かんできます。格子はカメラのレンズがやっとくらいの小ささだし、親指が鉄壁のディーフェンスだからすっげ難しいと思う。
ご本尊は聖観音。縁起には次のようにあります。
桓武天皇の時代に、この村に一人の老人が住んでいた。彼は貧乏でその上病身であったが、熱心な仏教信者であった。ある夜不思議な夢をみた。立派な服装をした老人が夢枕に立ち、「われはこの山中、池水の辺に住む龍神である。この池水の辺に聖観音閻浮壇金(えんぶだんごん)の霊像まします。汝にこれをさずくべし。更に池水の辺にて一木を与える。これにて一尺八寸の聖観音像を刻み、件の霊像をその胸中に納め、大切に拝み続けよ。」と。夢から覚めた。
彼は大変喜んで池の辺に行ってみると岩の傍らに、聖観音二寸八分の立像と皿があった。うやうやしくこれをいただき、一木の薫木を見つけ、一尺八寸の像を刻み、件の尊像を胸中に納め拝み続けた。
こうして出現された観音様は、池津の観音様として村人総出でお世話申し上げ、平安、鎌倉と続いた。
お寺の紹介文に観音様の通称などは見当たらなかったのですが、聖観音は池津観音と呼ばれ、地域で親しまれているようです。縁起にある池はお寺の近くにあり、「池津観音様出現池」と看板が立てられていました。
また、龍神は観音堂に羽の生えた龍として彫られています。江戸中期のもの。胴体がかなり短いために、羽が生えた龍というよりは龍の顔をした鳥のように見えました。
ご本尊の聖観音は像高50cmほど。不動さんと毘沙門さんを従えています。上半身は金箔が貼られ、顔立ちも江戸以降の雰囲気を醸しだしていますが、下半身は法衣の彫りも浅く古めかしい感じでした。木肌そのままのような下半身の暗い色調と、上半身の黄金色の対比がとても綺麗な聖観音でした。
縁起には続きがあります。
延宝元年(1673)の出火で観音堂とともに聖観音も燃えてしまった。しかし、それを悔やんだご住職が読経し続けたところ、灰の中から二寸八分の聖観音像が見つかった。ご住職は上京の折、洛陽三宝院御門主にこのことを話したところ、御門主自らが一刀をとり一尺八寸の観音像を彫刻されたのだそう。
ご住職に本尊について伺ったところ、縁起では桓武天皇とあるが実際の作成年代については火事や修復などもありよくわかっていないのだという。しかし一緒に出てきたといわれるお皿は残っていて、鑑定をしたところ、こちらは中国宋時代のものであったとか。
帰宅してから気づいたのですが、縁起には2体の仏像が登場しており、池から出現したといわれる仏像は二寸八分とかなり小さい。そしてご本尊である聖観音は、池の近くにあった薫木から彫ったとある。
お寺で購入した「越後三十三観音詳細地図(最新版)」では、お寺に掲示されていた縁起とは細部の表現が異なる縁起が紹介されていて、池から見つかった二寸八分の像は「黄金の観音像」とある。「件の霊像をその胸中に納め」の部分もダイレクトに「胎内仏」と表現されている。黄金の像が金銅仏ということであれば、出火の際も「灰の中から二寸八分が見つかった」というのも納得できる。
お寺から頂いた資料などには胎内仏の記述は一切ないのだが、調査をしたら胎内から平安期の金銅仏が出てきたりやしないのだろうか、などと想像してしまう。
2013.9.14
真福寺(しんぷくじ)
仏像 | 聖観音 |
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場所 | 〒947-0101 新潟県小千谷市片貝町469 |
問い合わせ先 | 真福寺(TEL:0258-84-2714) |
拝観時間 | 三十三観音霊場一斉開帳時は随時 |
拝観期間 | ご本尊は住職1代1回のご開帳 |
拝観料 | 志納 |
公式サイト | 池景山 真福寺 |
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