GATABUTSU

頭もぐるぐるとヒンドゥー教の乳海攪拌を思い浮かべ

投稿日 2012年8月31日 金曜日

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カテゴリ佐渡の仏像

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子供のころ自分が家を建てるなら『家の中に入った…と思ったら外だった』というような家を建てたいと思っていました。
どこでもドアのイメージが強く頭の中にあったからなのでしょうが、『ドアを開けると予想外の展開』 …そんな意外性のある建物に非常に憧れがありました。
最近では、素敵なお宅拝見バラエティーな番組でも、こういったアクロバットな類の家を目にするようになりましたが、そんなお宅を見るたびに
「おっ。あなたもドラえもんの影響を受けてるんですね。」
なんて勝手に思っているのです。

さて、そんな”家の中の外”に憧れる私が、ドラえもんが産まれる何百年も前に、
『家の中に家』
を実現したお寺に行ってきました。

場所は佐渡の慶宮寺。

日本海でとれた新鮮な魚介の寿司を喰らい、レンタカーで向かいました。冬を間近に控えた佐渡の空は残念ながら曇り空。

目的の『家の中に家』は八祖堂と言います。
本堂から少し離れた丘の上にあり、そこまでご住職に案内してもらいました。

「この道は、みうらじゅんといとうせいこうも歩いた道だな。ふたりはご住職との禅問答的な会話に困惑していたんだっけな。」

そう思いながら歩を進めると、どちらからともなくみうら氏の話題になりました。

「どうしてこのお寺に来ようと思ったんだね?」と、ご住職。
「あ、見仏記という本を読んで」
「みうらじゅんといとうせいこうが書いた本だね。本は持ってきたかね?持ってくればよかったのに。」

見仏記2 仏友編では、両氏がこの八祖堂を『仏も朽ちていく』という表現で語っていました。どうやらご住職はそのことについて何か言いたいことがあったようです。
時折興奮しながらお話をされる様子は、怒っているようでもあり、誇らしげのようでもあったのですが、結局のところ最後までどちらかは判断できませんでした。なるほど、確かに禅問答的なご住職ではあります。

八祖堂の扉を開けてもらい、中に入ります。

目の前にそびえ立つ『家の中に家』。テレテテッテテーン。

古くなり建て付けも悪くなっているお堂の扉を開けると、中にはもう一つのお堂がありました。お堂というよりかはむしろ塔のよう。

外のお堂は確かに朽ちていると表現してもおかしくないような傷み具合です。ところが『家の中に家』のその中の家は、思っていたよりも新しく見えました。
木肌の色のせいなのでしょうか。それはむしろ、新品のようでもあります。

しかし、近寄って見るとたしかに朽ちているのでした。
八祖堂の内陣は方形。その内陣に八角の回転厨子が置かれ、その各面に真言八祖像が安置されています。床下の棒を動かすと回転厨子は 360度回転し、その上層には金輪仏頂が祀られている特異な構造となっています。

八祖像のあるものは寄せて作った木の接着面がはがれ、またあるものは光背が首輪のようにかかりと、酷い状態でした。このあたりは野生動物もおおく、テンなどがこのお堂内に侵入し、損害を与えるともいいます。しかし、市の文化財保護だとかの条例が逆に邪魔をし、そういった損害を防ぐための修繕ができないのだと、ご住所は非常に憤慨していました。

天井の装飾がとても綺麗です。あいにくの曇り空でしたが、青空のときは扉から入る光に照らされて、もっと綺麗に見えるのだとか。

私も友人も天井に見とれていると、ご住職がふいに
「回していいよ」
と声をかけてくださいました。
目の前にある八祖堂を回してもいいらしいのです。

見仏記ではみうら氏たちも回していたようですが、別に取材に来ているわけじゃない私達でも回していいらしい。いいんすか。なんというサービス精神なんでしょう。

お神輿の担ぐところのような木の棒を持ち、力を入れるとゆっくりと回転厨子が回り始めました。テレテテッテテーン。
あー、でもゼルダの伝説の効果音のほうが似合う。

ゆっくりゆっくり回します。

『こいつ・・・動くぞ』

手には少し重みを感じます。時代の重みなのか、物理的な重みなのか。まわるまわるよ、時代は回る。頭の中では、中島みゆきの時代が流れ、いろいろなものがかくはんされてごちゃまぜです。

八祖堂を後にし、次の約束のあるお寺へ向かうために、車へ乗り込みました。
ご住職は車が出るまでいつまでも見守っていてくれている。ナビの操作がおぼつかない私は、申し訳なくなってとりあえず車を出した。お寺が見えなくなってから次の目的地をセットするために、改めて車を停めたのでした。

2011.11.13

慶宮寺(けいくうじ)

仏像 真言八祖像
場所 〒952-0212 新潟県佐渡市宮川457
問い合わせ先 慶宮寺(TEL:0259-66-2481)
拝観時間 要連絡
拝観期間 要連絡
拝観料 志納
公式サイト 佐渡  慶宮寺

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  • 見仏記〈2〉仏友篇 (角川文庫)
  • みうら じゅん, いとう せいこう
仏像鑑賞本の定番、みうらじゅん氏といとうせいこう氏の見仏記第二弾です。
当たり前だけど、仏像って宗教に密接に関わってるし、お作法とかも難しそうで敷居が高そう…と思っている人は、是非、この本を読んでみてください。そしてこの二人の、一見ふざけた仏像鑑賞の旅の裏に流れている仏像への愛がわかるようになったら、仏像を「見る」と言うことにも抵抗がなくなるかもしれません。
新潟のお寺からは、宝伝寺、明静院、西照寺、長安寺、長谷寺、国分寺、昭和殿、慶宮寺がエントリーしています。

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