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長安寺の阿弥陀様

投稿日 2011年12月08日 木曜日

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カテゴリ佐渡の仏像

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佐渡へ行くプロは、船に乗り込むと同時にどこからともなく毛布を持ってきてくるまるようなのです。

新潟県民の私、37歳にて初めての佐渡体験です。泊まるほどの金銭的余裕はなく、朝一の便で6時出港、最終22時半新潟港着の便で帰ってくるという、なかなか目一杯満喫なハードプランとなりました。

旅好きの友人と乗り込んだカーフェリー。少し前まで添乗員の仕事をしていた友人は、この船にも何度か乗っているらしく見慣れた光景のようです。しかし、私には未知の世界。小声で友人に「みんな毛布出してきて、寝んの?船楽しまないの?」などと確認しつつ、2等船室の一角を陣取ります。一番安いジュータンの席が敷き詰められた大広間のような席です。ボリボリとデカイ音をたてて煎餅を食う。

どうやら毛布は船内でレンタルしているらしく、早朝の便に乗り込む人は一眠りしていくのが定番らしい。しかし、私にとっては初の佐渡行きカーフェリー。この船も旅の一部ということで、船内探検などに繰り出してはみたものの、あっという間に飽きてしまいました。客室の外に出てまだ暗い海を見てみたり、売店の品揃えをチェックしてみたり、佐渡ゴールドパークのポスターに爆笑してみたり。砂金を採るのに、初級コースとか上級コースなんてあるんですね。

結局落ち着いたのは、イベント広場と呼ばれる船内の催事スペースのようなところ。
部屋の隅におかれた「おけさ丸乗船記念」の顔出し看板を見つけ、随分と長いこと顔出し看板について話しをしました。
この、全国の観光地どこにでもある看板。若く、トゲトゲととんがった年齢の時分には、「こんな変な看板、誰が顔出すんだ?」なんて思ってしまうのですが、歳という年輪を重ねるごとに、どんどん愛着が湧いてくるものです。
しかし、控えめにみても”こんな変な看板”。
突然、そこに現れるわけではなく、誰かしらが「顔出し看板を置こう」という意思決定をしたから、そこに存在しているわけなのですよね。
誰が置くことを決めたんだろう?…どんな会議で置くことが決まったんだろう?

顔を出す側にも、いろいろなプレイがあるようです。友人のこれまた友人も顔出し看板の愛好家らしいのですが、最近では自ら顔を出すのではなく、顔出し初心者の友人の顔をいかにして、穴から出させるか?というところに主眼を置くようになったそうです。
「大丈夫、恥ずかしいのは最初だけだから!」

もちろん私も顔出し写真撮りました。

そうこうしているウチに、船は佐渡近海。陸地が見えてきました。
以前、船で上海に行った時には、夜明け前の船上からから観るオレンジ色に輝いた工場群の姿に、まさに工場萌えな気分を味わったのですが、今回は巨大な能面がお出迎えです。往年のシューティングゲーム、スターソルジャーのラザロのような能面が、港にそびえる塔のような建物に張り付いていて、かなり恐怖です。

下船した私達は、両津港からほど近い長安寺に向かいました。
天気はあいにくの小雨模様。境内の落ち葉が、なんだか物悲しい気分にさせてくれます。

ご住職のおばあちゃんに出迎えていただき、収蔵庫を開けていただきました。
おばあちゃんは65年前にこのお寺に嫁いでこられたそう。先代のご住職である旦那様が昨年亡くなられて以来、このおばあちゃんがご住職としてお寺を守っているそうです。

昭和39年に建てたという収蔵庫。それまではかやぶきのお堂に阿弥陀様は祀られていたそうです。佐渡はほんっとに茅葺きのお堂が似合うんだけどなー。

国指定重要文化財の木造阿弥陀如来坐像。

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像高87cm。檜材の寄木造りで光背は二重輪光。平安後期に造られたもの。像と同じ檜材寄木造りの茸寄九重蓮華坐に結跏趺坐しています。定朝様で、蓮華座は蓮弁の1枚1枚が互い違いにはなっておらず、京都 平等院の阿弥陀様と同じように連なるようにして蓮弁が配置されています。

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全体的に非常にバランスがよく、左肩から流れる衣紋の表現は静かな水辺に広がる波紋のようで、息を呑むような美しさです。細くしなやかな指先と、金箔の残るその姿は気品に溢れ、光背からはまさしくオーラが放たれているようでした。

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これまで見てきた新潟の仏像の多くは、良しも悪しもどことなく田舎っぽさがつきまとうものでした。私たちの村にも、私たちの町にも仏様がほしい。そんな願いを元に村の大工さんがつくったような、そんな手作り感のある仏像を沢山みてきました。

この阿弥陀様は、それとはあきらかに違う空気をまとっています。

「ピカソの絵ってへんちくりんだよね。俺にも描けそう。」などとテレビを見て思っていても、いざ、実物を目の前にするとその本物が持つ圧倒的な空気を変える力によって、余計な軽口を叩いていた自分を恥ずかしく思ってしまう。圧倒的な力の前では、黙るしかない。喩えるならば、そういった感じ。

自分のような小者は、この阿弥陀様の気品の前ではただただひれ伏すしかなく、これまでの軽口を反省するばかりなのでした。

まぁでも、クレーの矢印描いた絵とか観ると爆笑するけど(反省してない)。

2011.11.13

長安寺(ちょうあんじ)

仏像 木造阿弥陀如来坐像(国指定重要文化財)
場所 〒952-3423 新潟県佐渡市久知河内152
問い合わせ先 長安寺(TEL:0259-27-7618)
拝観時間 要連絡
拝観期間 要連絡
拝観料 志納
公式サイト なし

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