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文化講座「黙して語る野の石仏-長岡市内の石仏を中心に-」

投稿日 2010年12月04日 土曜日

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長岡市の図書館で開催された石仏の文化講座、「黙して語る野の石仏-長岡市内の石仏を中心に-」に行ってきました。

会場に入ったら驚きの年齢層の高さで、若輩者のワタクシは浮きまくりだったのですが、中には小学生もいたようで驚きコンボでした。講演後の様子を見ていると、どうやらお母さんに付いてきたというよりは、この子供自体が石仏に興味を持っているようですね。将来が楽しみです!

当日のお話のメニューは、以下のような感じでした。講演をしてくださった、新潟県石仏の会の会長さんは、栃尾のかたのようで、長岡市全体をカバーしつつも、栃尾近辺の石仏に関しては、より色濃くお話されていました。

  1. 庶民の文化遺産「石仏」を通して
    • 道祖神
    • 六地蔵
    • 子安地蔵・子育観音
    • 北斗星石祠
  2. 生業と石仏
    • 養蚕
    • 馬頭観音
    • 山菜供養塔
  3. 地域の振興の歴史をたどる
    • 庚申講
  4. 石仏が語るもの
    • 恙虫(ツツガムシ)石祠
    • とっくりを持つお地蔵様
  5. 被災石仏その後
    • 諏訪神社(半蔵金)
    • 菅原神社(上来伝)

非常に盛りだくさんな内容であっという間の一時間半だったのですが、印象に残ったところをまとめますと...

「庶民の仏像」石仏

国宝などに指定されるような仏像は、ある意味権力の象徴といった面もあったが、石仏は「庶民の仏像」であり、昔の一般大衆の心のよりどころでもあった。まさに民間信仰で、石仏というものは”立っていた場所”に非常に意味がある。昔、その場所に居た人々の思いがつまっているのが、石仏だからである。しかし、風雪害などによって場所を移された石仏も多く、元々の場所に立っているものは少ない。
この石仏は、どうしてここにあるのか?元々ここにあったものなのか?を考えながら石仏を見ると、非常に面白い。

道祖神

栃尾には道祖神の石仏が沢山ある。道祖神は賽の神、ほだれ様、きんかん様などさまざまな呼ばれ方があり、集落の入り口に立ち、悪い病気が入らないように集落を守っている。
奇祭”ほだれ祭り”で有名な栃尾であるが、この「ほだれ」は「穂垂れ」が語源であり、五穀豊穣を意味している。
「きんかん様」は耳が聞こえないという病にご利益があると言われており、石仏の代わりに”穴の開いた石”や”穴のあいたお椀”が沢山置いてあるところもある。これは、”穴が開いている”というところから、「耳の通りがよくなるように」という願いがかけられているものである。
半蔵金地区には、キスをしている格好の道祖神「胞姫(えなひめ)様」が祀られている。(地元の人は抱姫(だきひめ)と呼ぶ人もいるそうです。)この接吻型の道祖神は珍しいもので、県外からも石仏愛好家が写真を撮りに来る、人気のある道祖神だそうです。

蚕神

新潟の中越は、昔は養蚕が盛んだったので、蚕にまつわる石仏も数多く残っている。栃尾の南部神社には、猫又権現が祀られていて、猫をかたどった石仏(狛猫?)がある。蚕はねずみに食べられてしまうところから、これも蚕の守り神とされている。猫の石仏というとことから招き猫としても考えられ、芸者さんにも大変信仰が厚かった。
また、ほこらに”まゆ”の形が彫られているだけのものもあるが、まゆ自体が蚕神を表している。
他にも、蚕神が馬に乗っている石碑も多く見ることができる。これは、中国の馬頭娘の故事に由来している。

馬頭観音

馬といえば、石仏では馬頭観音の石仏も多い。
馬頭観音は、仏教的には観音菩薩の変化身(へんげしん)のひとつであり、六観音のひとつとして畜生道を司る仏像であるが、石仏になると本来の意味よりも馬の供養塔(お墓)となっているものが多い。如意輪観音の石仏で、頭に馬が乗っている石仏も見ることができるが、これはメスの馬が亡くなったというように考えることができる。

庚申-青面金剛像

身体の中に住む三尸(さんし)という虫が人間の悪行を報告しに戻る日が60日に1回回ってくるという言い伝えがある。それが、庚申の日。昔は、その虫の報告によって寿命が縮んだり地獄に落ちたりすると考えられていたので、その虫を帰らせないために徹夜で夜を明かすのが庚申講というものだそうです。
この講演会のほんの少し前に、仕事で津南の山中に出かけたのですが、その際に庚申堂を見つけて気になっていたのです。自分としては、とてもタイムリーな話題でした。

昔は、女性は夜に出歩いたりすることはやりにくい世の中でした。庚申講は、この庚申待ちの行事を理由に、女性が夜更かしをしても許される日という側面もあったようです。
庚申の日のお寺での行事として、数珠ぐりをしている写真も見せていただきました。

青面金剛像は仏教的な庚申の守り神。神道では猿田彦神となっています。これは、庚申の「申」が猿田彦の猿と結び付けられたものと考えられています。猿が庚申の使いとされ、猿が彫られている石仏も多くあります。最初は二匹の猿が彫られていたようで、実際にそのような石仏も多くみることができるのですが、時代と共に「見ざる・言わざる・聞かざる」の三猿が彫られるようになったそうです。
また、朝を迎えると行事ということから、おんどりとめんどりが彫られている石仏も見ることができます。

恙虫石祠(つつがむしせきし)

新潟は過去、ツツガムシの被害が多くありましたので、信濃川の河川敷や阿賀野川周辺で、多くの恙虫石祠を見ることができるそうです。
以前、近所の信濃川河川敷を散歩していたときに、だだっぴろい河川敷にぽつんとある ほこら を見つけて、不思議に思っていた時期がありました。恐らく2年越しとかの疑問だったので、非常にスッキリしました。

地方の仏像や古い建造物、珍スポットなどを巡るときにどうしても考えてしまうのが、「どうしてこれがここにあるんだ?ここで昔、何があったんだ?」ということです。今回、石仏のお話を聞き、改めてこういった側面から地域のことを知る楽しみを感じられたように思います。

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  • 書いている人

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    やまざき ふみひろ

    フリーランス仏像愛好家。仏像についてひとことも喋らなくても、誰も困らないくらいのフリーランス。ライフスタイルとしての仏教好き。
    Twitter IDは[ @gatabutsu ]。新潟の仏像話を中心につぶやき中。
    Facebookでは、記事にする前のメモ書きや、美術館・博物館などもうちょい広い話題でやってます。

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