町田の閻魔堂
地獄というやつは、見仏の旅の中でもなかなかの異色スポットだと思います。
お釈迦様や大日如来、薬師如来なんかが祀られているごくごく一般的なお堂も、それぞれ仏教を前提としたストーリーが背景に漂っています。東寺の立体曼荼羅しかり、新薬師寺の薬師と十二神将しかり。
しかし、そのストーリー性が地獄ではより強く出ていると思うのです。
それは、「良い事をしていると仏様が救ってくれますよ」という教えよりも、「てめぇ、ちっとでも悪いことしたら地獄に堕ちて、ひでぇ目にあうんだぜ!」って教えのほうがより直接的でわかりやすかったからかもなのかもしれません。
上越方面に面白い地獄があるというので行ってきました。
吉川区は町田の閻魔堂。
看板どおりに道を曲がると建物がどんどん少なくなり、最終的には貯水池にブチ当たりました。田舎特有の迷い道地獄です。
気を取り直して近くの民家に場所を訪ねると、少し手前の交差点で曲がらなければならなかったようです。
辿りついた閻魔堂は、重そうな扉で閉ざされていました。
御住職らしきお家を訪ね閻魔堂について尋ねると、扉は重いけれども開けてはあるので自由に見て行っていいとのことです。
ガラッ)自由と聞いて!
てな具合に扉を開けると、正面では早速閻魔様がこちらを睨んでいました。(実際にはガラッどころか、ズズッズズズッズッズッふぅって感じでしたが)
この閻魔堂は閻魔市で有名な柏崎の閻魔堂、五智国分寺の閻魔堂(現在は焼失)と並んで新潟の三大閻魔と呼ばれて大変有名だったとのこと。閻魔像は何回か修理がおこなわれていて、新しくは明治37年に塗り替えがおこなわれたようです。肩の張り具合や、胸・下腹部の膨らみなんかの像の作風から見て室町時代初期の作品と考えられていて、その他の像についても同じ時代のものであると言われているそうです。
このお堂には閻魔像だけでなく、奪衣婆(だつえば)と初江王(しょこうおう)、地蔵菩薩の4体の像が祀られています。また、地獄ジオラマとして重要なのがその地獄アイテムです。ここには、「浄玻璃(じょうはり)」という嘘発見器的な鏡や、罪の重さを量る「業の量り(ごうのはかり)」や、「人頭杖」という罪悪判定装置まで揃っていて、なかなかの充実っぷりです。
やばいです。死んで地獄に堕ちたと思ったら、この奪衣婆のお出向かえ。ヤバイです。現代のように情報量の多くない室町時代。この奪衣婆を見せられて、地獄に落ちたらこの婆さんの餌食と教え込まれた日には、悔い改めようって気分にもなるってもんです。
多分、地獄でこの婆さんみて笑ったら、さらなる地獄行きなんでしょう。
こちらは人頭杖。秋葉区の普談寺ではじめて人頭杖をみたときには、なんのことやら意味がわからず、武将の生首くらいに思っていました。なんでも、この人頭杖まで揃っているお寺は、地獄ジオラマとしてはかなりのハイレベルらしいですね。
この閻魔堂、堂内に貼ってあった張り紙を見る限り、年に一回くらい町内でお祭りがおこなわれているようですね。そのお祭りのときに使う道具の倉庫にもなっていました。
カサカサ、ビューン。地獄の中の癒しです。
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