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俺が千手観音なら思う存分腕を組む

投稿日 2011年8月11日 木曜日

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カテゴリ中越地区の仏像, 秘仏

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最明寺千手観音

毎年2月18日と8月9日は、三条市下田地区 にある 最明寺の千手観音がご開帳です。

この下田地区は、7月30日に新潟を襲った集中豪雨でも特に被害の大きかった地域。
「ご開帳は中止になっているかも?」と、出かける前に電話をしたところ、「予定どおりご開帳いたします」と教えていただきました。

お寺へ向かう道中も、水害の爪痕がまだまだ残っていました。川の流れは、いろんなものを飲み込み、そして沢山の泥を置いていったようです。

20110809栃尾から下田に向かう209号の川近く

20110809栃尾から下田に向かう209号の川近く

こんな状態で手ぶらで仏さんに会いにいくのも申し訳ないので、午前中はボランティアセンターにおじゃまして、かんがい・治水工事(泥さらい)をやってきました。
文字通り無力・微力すぎて、マジすんません…な感じです。

最明寺の目の前にも大きな川が流れていました。時間の都合でお寺のかたにお話を聞くことは出来なかったのですが、駐車場で乾いている土を見ると、ここも水に浸かったことがうかがい知れます。

千手観音が祀られている観音堂は、本堂左手から伸びた石段を登ったところ。少し高いところなので、この観音堂は無事だったよう。

お寺にはカメヤマローソクがよく似合います。

寺にはカメヤマローソクがよく似合う

三条市はここ最近、指定文化財の説明板を整備しているらしく、非常に詳しくわかりやすい説明がかかれていました。

最明寺は、天平元年(729)に、妙白山千手院を称する法相宗寺院として開創し、当初の本尊は三尺七寸(天平尺では109.9cm)の千手観音像であったと伝えられています。鎌倉時代に真言宗に改宗し、寺号を妙白山千手院最明寺とし、旧本尊の千手観音像は、観音堂に安置されたと伝えられます。
千手観音菩薩坐像は、像高116.5cm、頭体幹部は杉とみられる針葉樹材の一木造です。千手観音の「千」は、無限を意味し、「千手」は救済のための手段を無限に持つことを示しています。本像は左右21本づつの腕をもつ四十二臂(しじゅうにひ)形式の像です。
本像はその構造的な簡明さと、両脚部の衣紋(えもん)の鎬(しのぎ)の立った平行状の彫り口から、一見古様な平安彫刻にみえます。しかし、髪際中央にやや垂みをつける髪形や凝った毛筋彫り、結跏趺坐(けっかふざ)する両足裏の現実感に富む表現などは、鎌倉時代も13世紀に入ってから広く行われるようになったもので、本像もその頃の制作になるものと思われます。八世紀には遡り得ず、当初の本尊の後心像として造立されたもので、やや古様な衣文、素木(しらき)仕上げなどは、前身となる古像の復興が意識されてのことと考えられます。

また特徴的な点は、頭頂の仏面以下四段に三十の変化面を配し、そのほとんどを菩薩面としていることで、憤怒相は一段目の左右最奥二面と後ろ側一面が瞋怒面(しんぬめん)、後ろ側に大笑面が一面作られているのみです。前身本尊からこの像への再興造立時にあたり、一般化しつつあった観音三十三応現在身進行により、仏頂面、化仏阿弥陀如来立像、本面ともに三十三面とされたものと考えられます。

本像の造立年代は、最も当初の彫り口があらわれている両脚部や腹部で十三世紀前半とみられますが、お顔や上体部の表面は後世に削られて修正が施されています。また、脇手(わきしゅ)の大略や取り付け位置が後世の修理でかわっていますが、太めの脇手をもつことはよく守られています。

千手観音菩薩坐像の古像は比較的少なく、本像は、後世の補修が少なくないとはいえ、十三世紀造立時の作風を十分に伺うことができるものであり、図像的にも稀有な像容である点で貴重です。
当地の古刹・最明寺の創建由来にみる千手観音像の後身像として、守り伝えられてきた歴史的意義も大きいといえます。

千手観音はかなり高めの位置にある厨子に祀られています。
この仏像は、今年の2月に新たに市の文化財指定となったのですが、その際、通常であればひっくり返したりして調査するところ、台座が壊れそうで厨子から下ろすことができず、厨子に上がって調査したそうです。

千手観音

新潟ではあまり見かけることのない、木造の千手観音坐像。それが素木仕上げで、大柄な体躯に太い脇手ときたもんですから、結構な迫力でした。
残念ながら顔面左には、大きなひび割れが入っていたのですが、大好きな大槻ケンヂを思わせてぐっと親近感が湧いてきます。

千手観音の「千手」とは救済のための手段を無限に持つことを示しているそうですが、ここ三条市では文字通り大勢のボランティアが「千の手」となって活躍しています。

2011.8.9

最明寺(さいみょうじ)

仏像 千手観音菩薩坐像(市指定文化財)
場所 新潟県三条市院内193
問い合わせ先 三条市 市民部 生涯学習課 文化財係 (TEL:0256-34-5511 内線245)
拝観時間 ご開帳の日は午前10時から千手観音開帳護摩法要
拝観期間 毎年2月18日及び8月9日のみの御開帳
拝観料 未確認(寸志)
公式サイト なし
新潟県三条市院内193

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  • 書いている人

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    やまざき ふみひろ

    フリーランス仏像愛好家。仏像についてひとことも喋らなくても、誰も困らないくらいのフリーランス。ライフスタイルとしての仏教好き。
    Twitter IDは[ @gatabutsu ]。新潟の仏像話を中心につぶやき中。
    Facebookでは、記事にする前のメモ書きや、美術館・博物館などもうちょい広い話題でやってます。

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