GATABUTSU

安禅寺の双身毘沙門天

投稿日 2014年1月02日 木曜日

コメント コメント(4)

カテゴリ中越地区の仏像, 秘仏

タグ | | | |

安禅寺の双身毘沙門天
ここ数年の恒例になっていますが、新年の安禅寺御開帳に行ってきました。特に今回は、じっくりと双身毘沙門天を見てみようかと。

場所はJR北長岡駅から西へ1km 金峯神社の隣り。金峯神社はかつて蔵王権現または蔵王堂と呼ばれ、南北朝時代から全国的霊場の中に位置づけられていました。古くから信仰の一大中心地であり、今年も大勢の人が二年参りに訪れていました。
この冬は雪も少なく、大晦日の夜に参拝の行列に並ぶのも苦になりません。天気も良く、例年よりは随分暖かい良い年越しでした。

社伝によれば、709年、金峯山の蔵王権現の分霊を古志郡楡原(こしぐんにればら:現 長岡市楡原)に勧請し、矢田(やだ:現 長岡市寺泊 矢田)を経て、鎌倉時代末期にこの地に遷ってきたとされる。安禅寺(天台宗)は、その金峯神社の蔵王堂の別当です。

合掌を下に

さて、双身毘沙門天。双身と呼ばれるのは見ての通り、二人の毘沙門天が背中合わせにくっついているから。
少なくとも新潟では他に見ることがなく、何故このような仏像がここにあるのかが初めてみたときから気になっています。

全身

双身毘沙門天をキーワードにさっと調べて見ると、次のような情報にたどり着きます。

      天台宗の信仰の中に登場する
      大阪府八尾市にある大聖勝軍寺
      大阪の神峯山寺(かぶさんじ)
      本山寺(神峯山寺の奥の院)
      近畿の信貴山玉蔵院
      東京 増上寺近くの妙定院。こちらと同じく鉄造の黒っぽい小さい像で、江戸城大奥から寄進されたうちの一つらしい。
      真言は「オン・シチロクリ・ソワカ」
      護摩供が≪浴油供≫という秘修法

象頭人身の双身像である真言宗の聖天(歓喜天)に対応するところの天台宗 双身毘沙門天という位置づけができるようです。

諸説あるようですが、毘沙門天とその妻神の吉祥天であると言われることもあり、合掌している手を下に向けているのが毘沙門天、それを上に向けているのが吉祥天なのだとか。
うーん、でもどちらも武神に見えますけどもね。髭はやしてるしな。

合掌を下に

保存会のかたにお話を伺ったところ鋳鉄製のようです。手に持たせていただきましたが、底面を見ると鋳鉄であるということがよくわかります。
彫りなどはかなり粗め。20センチほどの小さな像なのですがかなり重く、持つとズッシリくる。安禅寺には室町時代作の釈迦如来立像があり同じように鉄製なのですが、こちらの毘沙門天は江戸時代のものと思われます。

ちなみに、この安禅寺には大学の先生などが研究で何度も入っていますが、この像には見向きもしないようで、文化財的価値はないのだろうとのこと。

彫りはちょっと荒い

底面を見ると鋳鉄製とわかる

この安禅寺は信濃川のすぐ近くにあり、かつては水運の拠点となっていたところのようです。長岡城(現在の長岡駅周辺)ができるまでは、古志郡の要としての番城だったのだとか。

大阪には同じ双身毘沙門天を本尊とする神峯山寺がある。信濃川の水運と、大阪と北陸を結ぶ北前船。鋳鉄製ということから、同じ型から作られた仏像がどこかにあってもおかしくはないですよね。

信濃川の遙か上流には裸押し合い祭りで有名な、浦佐毘沙門堂があります。安禅寺でも、その昔は裸押し合い祭りがおこなわれていました。また、ツツガムシ病から民衆を守ると言われている常瞿梨童女(じょうぐりどうにょ)の尊像が浦佐毘沙門堂にありますが、安禅寺にはまったく同じ像容の御影像(掛け軸とハンコ)があります。

双身毘沙門天が安禅寺にたどり着いた背景とともに、信濃川流域の文化の近似点なんかを調べてみると楽しそうです。

2014.01.01

安禅寺(あんぜんじ)

仏像 毘沙門天,蔵王権現 他
場所 〒940-0027 新潟県長岡市西蔵王3-3-16
問い合わせ先 不明
拝観時間 不明
拝観期間 大晦日から1月3日までご開帳
拝観料 志納
公式サイト なし
新潟県長岡市西蔵王3丁目2−16

コメントを残していただけると、読者の反応の改善に役立ちます。自由にコメントしていただいて構いませんが、スパム行為や他人を貶める誹謗中傷などはご遠慮ください。

“安禅寺の双身毘沙門天” への4件のフィードバック

  1. 本田不二雄 より:

    ご無沙汰しています。
    久しぶりに拝見して、双身毘沙門天でびっくりしました。素晴らしいお像ですね。私も実物では拝見したことはありません。場所柄上杉謙信(長尾氏)あたりと絡んでいると面白いですが、どうでしょうね。

  2. gatabutsu より:

    コメントありがとうございます。
    やはり、その像の扱われ方からあまり表には出てこない類の像なんでしょうか。

    そして、そういえば上杉謙信→毘沙門天でしたね。
    上杉謙信の居城があった春日山は実家から割りと近いのですが、そういえばまだあまり周辺のお寺を見ていませんでした。里帰りの際のテーマにしておきます(笑

  3. 本田不二雄 より:

    そうなんです。長岡には戦国時代、長尾氏が蔵王堂城を築いたらしいのですが、居城が蔵王堂という時点で、すでに修験風味満点。そんな土壌から上杉謙信が生まれたわけで、双身毘沙門天も、中世末・戦国武将がいかにも念持仏で好みそうなモチーフだと思うんですよねぇ。

  4. gatabutsu より:

    なるほどー。
    今年から私も保存会に加えてもらいましたので、そんなところもテーマに調べてみます^^

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。

Loading
  • カテゴリー

  • 最近の投稿

  • おすすめ

    • 般若心経絵本
    • 諸橋 精光
    Image of 般若心経絵本

    絵本作家でもある長岡市にある千蔵院のご住職、諸橋精光氏の著書。
    タイトルのとおり般若心経を概念を絵本の世界で表していて読みやすく、その世界観をうまく表しているという実感があります。絵を見ながら般若心経の文字を読んでいるとスッと心が落ち着く瞬間があり、何度も読み直しました。

    • 壊れても仏像―文化財修復のはなし
    • 飯泉 太子宗
    Image of 壊れても仏像―文化財修復のはなし

    仏像修復をおこなっている飯泉太子宗氏の仏像修復に関するエッセイ。
    今、仏像に関する書籍は数多く出版されていますが、この本のような視点から書かれた本はあまり多くなく、いくつかのお寺を訪ねて仏像を見て回ったあとは、ぜひこの本を読んでみることをおすすめします。

    新潟に限らず地方の仏像を見て回っていると、宗教や美術品という見方とは一線を隠した独特の"信仰"という感覚を感じることがあります。
    仏像はその土地に昔から住んでいた人を繋いでいる、リレーのバトンだと思うんですが、それがこの本を読むとスッと入ってくる。
    数ある仏像関連書籍の中で、一番好きな本です。

    • 見仏記〈2〉仏友篇 (角川文庫)
    • いとう せいこう, みうら じゅん
    Image of 見仏記〈2〉仏友篇 (角川文庫)

    仏像鑑賞本の定番、みうらじゅん氏といとうせいこう氏の見仏記第二弾です。
    当たり前だけど、仏像って宗教に密接に関わってるし、お作法とかも難しそうで敷居が高そう...と思っている人は、是非、この本を読んでみてください。そしてこの二人の、一見ふざけた仏像鑑賞の旅の裏に流れている仏像への愛がわかるようになったら、仏像を「見る」と言うことにも抵抗がなくなるかもしれません。

    新潟のお寺からは、宝伝寺、明静院、西照寺、長安寺、長谷寺、国分寺、昭和殿、慶宮寺がエントリーしています。

    • 晴れた日は巨大仏を見に (幻冬舎文庫)
    • 宮田 珠己
    Image of 晴れた日は巨大仏を見に (幻冬舎文庫)

    全国の大仏がある風景を全力で脱力しながら見て回るエッセイ。
    一見脱力していながらも、練られた構成と鋭い視点で綴られた旅の話は、仏像好きではなくとも楽しめます。

    新潟からは、越後の里の親鸞聖人大立像と、弘願寺の屋上に立つ弘法大師像が登場。どちらも不意にぬっと現れる新潟屈指の大仏です。

    • 大仏をめぐろう
    • 坂原 弘康
    Image of 大仏をめぐろう

    全国各地の大仏・大観音70体をカラー写真と詳細なデータで紹介。奈良・鎌倉をはじめとした歴史ある大仏から、「胎内めぐり」ができる大仏・大観音、地元住民に愛される「ご当地大仏」まで、著者が30年にわたり全国の大仏を訪問し気づいた、お寺めぐり、仏像めぐりの新しい楽しみを提案。
    新潟からは越後の里 親鸞聖人,弘願寺弘法大師像,白馬大仏がエントリー。

  • 書いている人

    1

    やまざき ふみひろ

    フリーランス仏像愛好家。仏像についてひとことも喋らなくても、誰も困らないくらいのフリーランス。ライフスタイルとしての仏教好き。
    Twitter IDは[ @gatabutsu ]。新潟の仏像話を中心につぶやき中。
    Facebookでは、記事にする前のメモ書きや、美術館・博物館などもうちょい広い話題でやってます。

    mail
  • Meta

  • Facebook

  • ガタブツ