GATABUTSU

ラブミー千手

投稿日 2013年6月16日 日曜日

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カテゴリ中越地区の仏像

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20年ぶりといわれるご開帳の扉を開けると、厨子の中では二匹の鼠が交尾をしていた。
それを見た刑事はそれまでの沈黙を破り、狭いお堂の中で大きな声をあげた。
「皆さん!これでこの密室の謎はすべて解けました!!」

書き出しはフィクションでコロンボも等々力警部もいませんでした。

見附市にある椿沢寺(ちんたくじ)のご開帳に行って来ました。
椿沢寺は越後三十三観音霊場の十六番。今年は北条時頼が没後750年の節目ということで、三十三の霊場で一斉開帳が行われています。



晴れわたる青空。予想気温は30度を超えていましたが、お堂周辺は木陰になっているせいかさほど暑さを感じませんでした。
ご開帳の儀は10時、13時、15時の3回。10時少し前に観音堂に着くと、お堂の中は既に白衣を着たお遍路さんで埋め尽くされていました。御詠歌会と呼ぶそうです。
観音堂の入り口付近で邪魔にならないようにコンパクトになっていると、3人のお坊さんが鐘を鳴らしながら参道を歩いて来ました。ラブミーのポップなマットを踏んで、お堂にあがります。

お経が読まれ、護摩が焚かれます。その後、御詠歌会による御詠歌の合唱。
それぞれの霊場ごとに御詠歌(巡礼歌)があるのですが、その他にもお地蔵様の唄、観音様の唄などいくつもの唄があるようです。とにかくこの合唱が長い。

時折リズムが代わり、そのリズムを取る楽器も持鈴(じれい:手に持つ独鈷杵のような鈴)から印金(携帯用おリン:鐘)に変わったりと、退屈になりそうなタイミングでそれを見透かしたように若干の変化が加わります。
長い長い合唱だったのですが「集まってお茶でも飲みながら練習とかするんだろうか?」などと、その背景を想像しながら見ていると、そのリズムの変化などもなかなか楽しく感じられました。

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これが持鈴というやつです。前半戦は歌に合わせてこれがチリンチリンと鳴り響きました。非常に素敵な音色で、繰り返し鳴らされるとトリップして河の向こうのお花畑が見えてきます
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これが印金というやつです。仏壇の前にある鐘の携帯版といったイメージ。裏拍でチーンチーンと繰り返し鳴らされると、河の向こうの花園に4つ打ちで太鼓を叩くおじいさんが見えてきました


私は歴史や宗教、あるいは遍路などにさほど興味があるわけではないので、システムがよくわからないのです。
御詠歌会さんが着ている白衣の襟元には梵字とともに、十六番という数が書かれていたので、このお寺専門の御詠歌会の皆さんなんでしょうか。それとも札所ごとに用意された白衣などがあるのでしょうか?別のお堂のご開帳に行くと、十七番で埋め尽くされているのでしょうか。なにげに三十三観音一斉開帳で訪れたお寺はココが一番最初です。

梵字やイラストなどを背中にまとった大勢の人々を見ていると、これが特攻服のルーツなのではなかろうかという仮説が頭に浮かんできます。また、背番号十六はベイスターズなら投手の加賀でサイドスローのイカした奴ですし、「背番号 16」でググると野球の神様が現れます。加賀投手には野球の仏像という称号を与えたい。

内陣に入り、おびんずるさん、お地蔵さん、本尊の千手、多聞天にそれぞれお参り。
ご本尊は709年行基作と言われる千手さん。立像で四十二臂でしょうか。一木造りっぽく彫りも浅い、平安初期の仏像のような雰囲気を感じます。目が墨で描かれているせいなのか、キリッとした印象。像高は120cmくらいでしょうか、少し高い位置の厨子の中に祀られています。

倉茂吉海氏の「越後巡礼 三十三観音札所」には次のようにあります。

昔、この村に椿の霊木が流れ着いた。丁度その頃、このあたりを巡錫中の行基菩薩がこのことを聞きつけ、その霊木を一刀三礼して彫刻したのが、御丈三尺五寸の本尊千手観音である。その後、上杉謙信公もこの観世音を深く信仰され、度々の願いが皆成就するので、御礼として寺領などを寄進した。
今でも謙信公から頂いた礼状や仏具、法器などが、寺宝として残されている。

越後巡礼 三十三観音札所(考古堂書店)/倉茂吉海

前回の開帳は平成3年らしいので、22年ぶりですね。

次のご開帳時には、御詠歌会はどうなっているんでしょうか。ひいき目にみても次は厳しいなという感じです。

翌日、県外から新潟へ移住してきた彫刻家のかたとお話をしました。
自然に囲まれた土地と、その土地を守るように立つ大きなお寺が気に入り、空き家となっていた古民家を改装して住んでいるそうです。お寺での歴史講演会や、アーティストイベントなども企画されていて、私も何回か足を運びました。

こういう地域の行事って、中にいると良さがあまりわからないんですよね。
だから、よそ者が面白がったり、勿体無いと思ったりしてちょっかいを出さないと、その価値が正しく認識されなくなってしまう。そんな話をその彫刻家のかたとお話しました。

「ご開帳の扉を開けると中には何もなかった」なんてことにならないように、地域文化を次の世代に引き継いで行けるようにしたいですね。

2013.6.2

  • 越後巡礼―三十三観音札所 (1982年)
越後巡礼―三十三観音札所 (1982年)
越後三十三観音札所について、現在手に入れられる書籍はこの本ともう一冊ほどしかありません。古い本なのでこの本もなかなか手に入れることは難しいですが、新潟の大型書店などで郷土史コーナーなどを覗くとまだ置いていることもあります。
三十三の札所と番外四箇所の計三十七ヶ所を紹介。三十三霊場全体の分布図に始まり、それぞれの札所の写真と巡礼歌歴史などがカラー写真付きで掲載されています。後半では、それぞれの札所ごとの距離概略図に加えて詳細地図、鉄道・路線バス案内やおすすめコースなども紹介されています。
流石に路線バスなどの案内はもう使えないと思いますが、おすすめコースは「縦に長い新潟のどこから入るか」に合わせていくつかのパターンが紹介されており、非常に参考になるのではないでしょうか。

椿沢寺(ちんたくじ)

仏像 千手観音
場所 〒954-0037 新潟県見附市椿沢町3256
問い合わせ先 椿沢寺(TEL:0258-62-1574)
拝観時間 ご本尊ご開帳時は、10時、13時、15時
拝観期間 ご本尊は住職1代1回のご開帳
拝観料 志納
公式サイト なし

[googlemap lat=”37.491645″ lng=”138.930608″ align=”undefined” width=”500px” height=”300px” zoom=”13″ type=”G_NORMAL_MAP”]新潟県見附市椿澤町3317[/googlemap]

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